価値転換こそが重要!人口減少時代の大都市経済

人口減少時代の大都市経済 ―価値転換への選択

 この本で述べていることは痛快です。

・戦後経済モデルは終わった
・年金は高齢社会に合わない
・増税の必要ない

 高度成長の要因を産業政策や「日本型企業システム」などに求める議論がこれまででした。本書によると,実は違うようです。人口の急増によって低賃金の若年労働者(現在の60代,70代前半)が増え、彼らが農村から都市に大量に移動したという要因でほとんど説明できるようです。賃金が年功序列で上がっていったのも,入社時の賃金がおそろしく低かったから可能だった話です。

 1980年代後半から,日本の企業は内向きになったそうです。海外の市場を目指さなくても,国内市場だけで十分であると。そのことがグローバル化を遅らせたというのです。著者がいうには,研究開発部門こそ,外国人を入れて世界市場を目指すべきなのに,日本で議論されているのは単純労働の外国人の話ばかりですね。しかも日本のどこの企業も研究開発部門なんか減る一方です。道理で修士卒でも仕事がないはず…

 わたしは思います。1980年から第一次ゆとり教育が小学校で始まり,1981年から中学校でもゆとり教育が始まって,英語が週4時間から3時間に減少したんですね。このころ既に「国際化」とは口先だけで,企業も学校も国内しか見なくなり始めていたんですね。

【ブログ内参照】
ゆとり教育の歴史 その1 | オブジェクト脳@kcg

 年功序列・終身雇用のシステムは,戦争中に国家によって生み出された制度だそうです。戦争中に自由に会社を変わる職人たちが,転職のたびに賃金が上がるので,結果として製品コストを跳ね上げるため,戦争中のもの不足に不都合だったかです。このシステムは,戦後の高度成長期でもいまだ適していましたた。人口の大部分を占める若年労働者を,労働生産性以下の低賃金で働かせることができたからです。現在の日本企業のブラック企業体質は終戦の時から始まっていたんですね。

 さて,若者を大量に集めてきた東京,名古屋,大阪。とりわけ近年は東京のみ若者を集めてきています。10年以内に東京を中心とした大都市部で急速に高齢化がおきます。高齢化と財政破綻と世代間格差という日本の問題が,大都市で起きるとは…
 「人口統計は嘘をつかないといわれるように、そこから紡ぎ出される像は、確実な見取図を私たちに示してくれる。」と著者は言っています。でも官僚たちは国勢調査やっているだけで,データとりっぱなしでは…

 日本の低成長やデフレなどの根底にある原因は,人口動態によるにな変化だと著者は主張しています。補正予算による景気刺激は無意味なんですね。

 どうすれば成長しない社会で幸福に生きられるかを考える必要があると言っており,欧米、特にヨーロッパのことが紹介されています。でもこの程度の紹介ではヨーロッパのことはよくわかりませんね。

 国際化,ビジネスモデルの転換,財政政策の転換,人生の再設計などなど。日本人には無理っぽいですね。

【目次】
・第1章 行き詰まる大都市
 高齢化は大都市を直撃する
 変わる人口の局集中
 変貌する大都市 ほか
・第2章 大都市経済はどこに向かうべきか
 日本経済が縮小する
 現在のビジネスモデルでは未来は拓けない
 なぜ現在のビジネスモデルではダメなのか ほか
・第3章 大都市社会はどこに向かうべきか
 いかにして社会を豊かにするか
 いかにして人生を豊かにするか
 いかにして街を豊かにするか

書籍 人口減少時代の大都市経済 | 商品案内 | 投資・経済・ビジネスの東洋経済オンライン

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