名著,三省堂の「高等学校の微分・積分」

高等学校の微分・積分 (ちくま学芸文庫)

 本書は1982年頃の高等学校の数学の教科書(三省堂)の教科書本体と指導書を文庫本化したシリーズです。今回は「微分・積分」を紹介します。
 微分積分の本はきまって,極限から始まって微分,微分の応用,積分,積分の応用という構成になっている。これはコーシーのころにこのような構成になったのである。もし,微分と積分を関数の種類別に並べるのなら,どうなるのだろうか?
 かなり,面白い構成になるのである。この本はユニークな構成になっている。

【目次と概要】
第1章 微分と積分
1.1 運動と微分・積分
…速度,加速度,第2次導関数,落下運動など
1.2 微分・積分の計算
…合成関数の微分と置換積分を対比させている。逆関数の微分,積・商の微分

第2章 指数関数
2.1 指数関数の変化
…コーヒーの冷め方,バクテリアの増殖など
2.2 成長と衰退
…指数関数の微分方程式
2.3 指数・対数と微分積分の計算
…対数微分など

第3章 三角関数
3.1 平面上の運動をとらえる
…円運動,平面上の運動などベクトルの時間微分を扱っている。
3.2 円運動の速度
…三角関数の微分と積分
3.3 円運動と振動
…単振動を扱う。発展として,振動の方程式を扱い,2階の微分方程式の特性方程式の判別式の話もある。

第4章 微分・積分の応用
4.1 微分の応用
…微分が近似式であることを扱っている。
4.2 積分の応用
…面積,体積,重心
4.3 微分方程式
…微分方程式の図解がありますよ。

第5章 極限と連続
5.1 数列と極限
指数関数と等比数列,発散や0に収束することが数値的にε-δ論法を使って示している。
5.2 連続と近似
連続関数,中間値の定理,平均値の定理,関数の近似を扱う。

指導資料

 第1章は整関数(いわゆるn次関数)の微分・積分である。章の終わりは微分方程式まで扱う。どうような構成が第2章,第3章とつづく。第4章と第5章は微分・積分を見渡すまとめである。
 私は,20歳頃に家庭教師先でこの教科書(三省堂)をみて驚いた。その大胆な構成は,実用的であることがわかる。それから10年以上たって,私は,この本の構成にならって,自分の本を書いたのです。

【参考】
関数・微分方程式がビジュアルにわかる微分積分の展開―数学・物理学・工学の三体一体

【ブログ内参照】
三省堂高等学校数学教科書 | オブジェクト脳@kcg
ゆとり教育の歴史 その1 | オブジェクト脳@kcg
著作権の保護期間が満了した高木貞治の「解析概論」 | オブジェクト脳@kcg

三省堂の「高等学校の微分・積分」

図 三省堂の「高等学校の微分・積分」の表紙

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