今回は集合について取り上げます。
「基礎数学のABC」
第1章 集合と論証
第1節 集合
第2節 命題と集合
第3節 コンピュータと集合
そもそも,この本の最初に「集合と論証」を持ってきたのはなぜか? 1994年度から実施された学習指導要領では数学はI/II/III系統とA/B/C系統に分けられた。文部科学省の科目番号の決まりでは,I/II/III系統は積み上がっていくイメージであるのに対して,A/B/C系統は学校の状況に合わせて履修させる科目なのである。I/II/III系統は解析学の系統の単元が多く,その扱いはかなり伝統的かつ体系的であった。一方,A/B/C系統はカオスなのである。特に,2003年度から実施の学習指導横領(世間でいうゆとり)の数学Aは謎めいていた。抜粋して掲載する。
【出典】
第4節 数 学(第3次ゆとり教育の数学A)
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(1) 平面図形
ア 三角形の性質 イ 円の性質
(2) 集合と論理
図表示などを用いて集合についての基本的な事項を理解し,統合的に見ることの有用性を認識し,論理的な思考力を伸ばすとともに,それらを命題などの考察に生かすことができるようにする。
ア 集合と要素の個数 イ 命題と証明
(3) 場合の数と確率
ア 順列・組合せ イ 確率とその基本的な法則 ウ 独立な試行と確率
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2004年の執筆当時に出版されたほとんどの教科書は何の思想もなく,3単元が並んでいるだけでした。しかし,啓林館だけはストーリー性があったんです。
- 「集合と論理」の論理を発展させる形で「平面図形」を扱う
- 「集合と論理」の集合を発展させる形で「場合の数と確率」を扱う
この流れはすばらしい。そこで我々もこの流れに従うことにしたんです。こうすれば,「場合の数と確率」から「統計」へつなぐことができるからです。
さて,実際に執筆を始めると公務員試験で出題されるが「命題と論証」であることがわかった。もちろん情報系の教員だったので,論理回路も扱いたい。そこで以下のような流れになった。
- 第1節 集合→「第2章 個数の処理と確率」→「第3章 統計とコンピュータ」
- 第2節 命題と集合→「第4章 初等幾何の体系」→「第5章 解析幾何とベクトル」
- 第3節 コンピュータと集合
このことは本書を構成していく上できわめて重要なコンセプトであることが理解していただけるでしょう。
【参考文献】
「使える集合論」の学習をしたいなら,この本はオススメです。日本語訳は絶版ですので中古品をご購入ください,Schaum’s Outline of Set Theory and Related Topicsが原著です。最新版をお探しください。
タイトルとすこし異なって,集合論入門です。
離散数学入門です。
【シリーズ】
「基礎数学のABC」著者語る1 初等幾何の体系 図形と計量,三平方の定理 | オブ脳@kcg