本当は謎がない「古代史」 (ソフトバンク新書)
「世界各国の歴史を見るのと同じように、自然体で日本の歴史を考察してみると、「謎」といわれていることのほとんどは「謎」ではない。「古代史の謎」とされるものは本当に「謎」といえるほどのことなのか。いますべての真実が明らかになる。」というのが本書のスタンス。
特徴1 固有名詞と普通名詞
「ひみこ」や「やまと」はこれまで固有名詞と思われていましたが,著者は普通名詞であると仮定して論を進めています。確かに,ヨーロッパの言語を勉強していいれば,Himikoなのかa himikoなのかで全く変わってきますよね。
また「やまと」なんて地名はあちらこちらにあるんですよ。「やまたいこく」という名前すら普通名詞かも?
特徴2 日本人と日本語の期限
弥生人というのが朝鮮半島からの渡来人。そのあと(孔子や始皇帝の時代),呉越地方(現在の中国で言えば上海から南部)から朝鮮半島に流れ着いて日本に来た人たちが日本人の起源であると推定しています。たしかに,そうかもしれません。北京や天津の中国人よりも,福建の人たちは日本人に似ています。
【ブログ内参照】
中国人を理解しないで生きていけない日本人 (ベスト新書)
言語に関したは,スペイン語と英語の成立過程をあげて,「くに」の確立によって方言から国語になることあげています。日本語はピジン言語だったのを渡来人がまとめたクレオール語であると推定しています。
ここまでをまとめると,日本語は朝鮮語の影響を受けて朝鮮語によく似た言語であるが,かなり異なっているという見解です。更に私の考察をすすめと,朝鮮半島経由で呉越地方の人が漢字もたらして,「呉音」と呼ばれる漢字の読みをもたらしたと思えば謎はすっきりします。
特徴3 歴史上の人物の持ち上げ方はプロジェクトXだ
歴史書の書き方に関して,客観を重んじる現在の書き方ではなく,当時は「プロジェクトX」風に記述したのではないかと書いています。
特徴4 唐の落日が日本の古代の終焉である
これも納得。私は中国に行くようになってから,「日本って,唐が終わってから,中国からあまり学んでいないのではなかろうか」と思い始めましたが,まさにその通りのようですね。中国は宋がモンゴル人支配の元になり,もう一度,中国人の国になっても,ふたたび,異民族支配の清になっていくんですよ。この課程で中華思想が熟成していくのですが,日本へは中華思想ははいってこないんですよ。日本と中国は似ているけど大きく異なる理由がわかってきました。
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【目次】
第一章 「旧石器捏造事件」と「週替わり世紀の発見」の不思議
第二章 「神武東征」は記紀には書かれていなかった
第三章 機内勢力が筑紫に初登場したのは邪馬台国が滅びてから
第四章 『魏志倭人伝』を外交文書として読めば真実は明白
第五章 継体天皇が新王朝を創った可能性はない
第六章 中国の混乱と大和朝廷必死の外交戦略
第七章 「聖徳太子架空説」と「天武朝の過大評価」を嗤う
第八章 「唐の落日」とともに「日本の古代」も終わった