今回は二次方程式の根から複素数,複素数平面について考えてみたいと思います。コンピュータでは原則的には複素数は扱えません。複素数をサポートしているのは研究分野以外ではメジャーでないFortranぐらいでしょう。そのことを考えると,高等学校の数学で複素数に深入りする必要性があるのかと思います。
第1章 1次関数,2次関数 第2節 2次の変化と方程式
第2章 数と式 第1節 実数と複素数
第6章 座標幾何 第2節 極座標の幾何
1 ルートの中が負の数になる
複素数がどうやってでてきたかというと,ルートの中が負数になることから出てきています。コンピュータで計算することを重視する立場では,実数をまず重視するべきでしょう。そこで第1章では実数だけで考えています。そこで解(solution)と根(root)を区別します。
判別式Dが正 実数解は2つ, 異なる2つの実数根
判別式Dが0 実数解は1つ, 同じ値の2つの実数根
判別式Dが正 実数解はなし, 異なる2つの複素数根
このように整理した方がすっきりします。解は場合によって個数が異なるが,根は常に2つあるんです。
第1章p18と第2章p50を比較してください。
2 計算について閉じている
第2章の最初に,自然数,整数,有理数が加減乗除で閉じているかどうかを最初に考えさせることにしました。プログラミングの際,整数型で定義した複数の変数の平均値をとると割り算が発生するので,浮動小数単型に変わります。強制型変換つまりキャストする必要があります。こういうことを意識させるが数学で重要です。
3 三平方の定理から無理数へ
たびたび,三平方の定理を簡単に扱って,無理数の図解を行っています。ピタゴラス学派は三平方の定理から,無理数に気がついたんですから,こういうことは教える方がいいですよね。しかも,印象深いと思います。
ルートの足し算と引き算(p44)の図解はいいと思いますよ。また二重根号については,p224の正五角形の対角線を参考にするといいでしょう。
4 複素数平面
複素数の図形的表示ですが,第2章では共役と和・差をとりあげます。
第6章で極座標として複素数を取り上げて,複素数の積・商をとりあげます。
この本の趣旨は高等学校の数学を単に復習することが目的ではなく,大学や専門学校の数学で使っていくことが目的です。自然対数の底eの虚数べき乗まで扱って,最後はオイラーの公式でこの本と締めとしました。
【参考書】