ずるい!? なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか (ディスカヴァー携書)
1 欧米人に論理的思考
マイケル・サンデル教授の授業をDVDで受講して感動したのは,「文科系でも論理的」であることです。「ユークリッド原論」(いわゆる幾何学原論)の伝統のごとく,公理から定理を導き出すような明快さが,さすがは欧米文化を思わせます。
【ブログ内参照】
オブ脳とはアリストテレスの正義のこと | オブジェクト脳@kcg
NHK ハーバード白熱教室 DVD BOX が到着 | オブジェクト脳@kcg
【予約開始】ハーバード白熱教室 | オブジェクト脳@kcg
ところが,公理や定理は一種のルール。日本人は公理は金科玉条のごとく考えるが,欧米人は公理も疑って,変更して新たに体系を作ることができますね。たとえば,「平行線は交わらない」という平行線公理を破って,「平行線が交わることもある」という非ユークリッド幾何学を創造した。地球上では,平行線である経線は北極と南極では交わりますよね。平行線公理を変更することよって新しい幾何学も生まれるのです。
2 F1,スポーツ,ビジネスはルール作りから
人間同士の取引であれば,ルールを変更しながら進めることは当たり前。むしろ,ルール作りから勝負が始まっているのです。
著者はホンダに勤務している会社員。1980年代にホンダがF1で「マクラーレン・ホンダのターボエンジン」で強かったのですが,FIAが1989年から「ターボエンジン」禁止をしたことも欧米人にルール作りの例としてあげてあげています。
【参考】
F1規約と統計: 1980-1989年 : F1通信
オリンピックの各種目のルール作りのことは相当詳しく書かれています。ルール作りからオリンピック競技は始まっているのです。欧米人はルール作りに関心があるんです。
3 ルール作りに関心がない日本人
日本人は「それはルールだから仕方がない」といいます。これはおかしいのです。理不尽なルールは変更するべきですが,日本ではルールを変更することができないルールを作っています。それくらい,ルール変更を嫌います。
もうひとつ,ルールがなぜ作られたのかという理由を議事録などに残さないのです。これは,どうしようもないです。ルール作りをつくったら,「どういう根拠でこのルールを作ったのか」を明確に記録する必要があります。こうしないと,ITを用いたシステム設計ができません。日本のみなさん,いい加減,論理的になりませんか? このままだと日本は沈んでいきますよ!
4 ルール作りは官僚がするもの
日本ではルール作りは官僚がするものです。政治家ですらルール作りが苦手で,官僚の作ったルールを政治家が承認している有様です。本書は,「ルールはお上がつくるもの」という考え方を卒業しましょうと訴えています。
5 ルールとプリンシプル
ルールとプリンシプル(原理・原則)は異なると本書は述べています。言われてみれば,プリンシプルは公理にあたり,ルールはプリンシプルから導かれる定理みたいなもの。ところが,多くの日本人はプリンシプルとルールの区別もつかないので,本来変更するべきでないプリンシプルを変更したりするので,欧米人には理解不能とのこと。
本書p32によると,
・プリンシプル…考え方の同じ人や組織に発生。状況に左右されない。自律的。
・ルール…考え方の違う人・組織間の”決めごと”。状況に合わせて変える。他律的。
これでわかりましたよ。ドイツでは考え方のしっかりしている人のことを「Dummkopf(石頭)」と言って,ほめ言葉なのに,日本では「柔軟性がない」とけなされるんですね。多分,ドイツ人は「プリンシプルを守る人がすばらしい」と考えるのですが,プリンシプルとルールの区別がつかない日本人では,そんなことは理解しがたいのでしょうね。
なお,著者は以下の本も紹介しています。
Amazon.co.jp: プリンシプルのない日本 (新潮文庫): 白洲 次郎: 本
最後になりましたが,金融庁のページをご覧下さい。論理的でない多くの日本人には理解が難しいでしょうね。
「金融規制の質的向上:ルール準拠とプリンシプル準拠」:金融庁
【ルール作りに関心ある人はKCGIへ】
京都情報大学院大学 | 入学説明会…2010年1月29日(土)・2月19日(土)