MITスローン・スクールのデジタル・ビジネス・センターのエリク・ブリニョルフソンとアンドリュー・マカフィーの”Race Against The Machine(機械との競争)”は「飛躍的に能力を拡大していくコンピュータに人間はますます仕事を奪われる」といっています。本書によると,リーマン・ショック後,世界的な経済危機は脱しても一向に失われた雇用が回復しない状況に経済学者は頭をひねってきました。第一に,ポール・クルーグマンが唱える景気循環説では,雇用の回復が弱く,需要が不足していると見ています。第二には,タイラー・コーエンが提唱する技術革新の停滞説では,経済を進歩させる新しい強力な発想が生まれてないからだと見ます。彼らは第三の説として「技術の進歩が速すぎて起きる雇用喪失説」の立場をとります。端的に言えば,コンピュータとの競争に人間が負け始めていることこそ,雇用が回復しない真の原因であると主張するのです。 「機械に雇用が奪われる」というこれまでにもありましたが,「単純労働者の雇用がなくなるから知的労働に従事する必要がある」というものでした。知的労働者でも,弁護士などの法曹界や医療診断分野も,コンピュータに浸食されつつあり,そして,eラーニングを始めた大学では講義を簡単に制作して,しかも簡単に配信できるという情報通信技術の進歩は,大学教員や大学そのものの存続を危うくするのです。機械翻訳の精度も上がっているので,海外のコンテンツも日本に入ってきます。
【参考】
名著で考える「人機一体の経営」 – 『機械との競争』、コンピューターが人の仕事を奪う日も近い:ITpro