学歴社会について考えよう!

学歴社会新しい文明病 (〈特装版〉岩波現代選書)

 本書は1978年に初版の第3版(1998年)です。1978年当時の日本は受験戦争が真っ盛りで,このころは小学校では集合論を教られていて,落ちこぼれが続出し,1980年からゆとり教育が実施される直前です。
 日本では教育が選別機能によって抑圧され,一片の卒業証書のために競争する「学歴社会」ができつつあったのですが,大学進学率は15~20%の間ぐらいでしたので,「日本の大学制度はよくできている」と本書の著者はほめています。しかるに本書の出版された同じころの1976年(昭和51年)4月1日に施行された私学助成振興法(私学助成法ともいう)によってどんどん私立大学が出来たのは周知の事実です。
 まずは目次をご覧ください。

【目次】
第1部 診断
 (問題の所在;イギリス;日本;スリランカ;ケニヤ;後発効果)
第2部 常識的な対策
 (教育と開発―学問的論争;教育と開発―政策の変転;キューバの学制改革;タンサニアの学制改革;スリランカの学制改革)
第3部 よりラジカルな解決策
 (脱学校論;ささやかな提言;中国とタンザニアにおける改革;振り返って―平等と多様性)

 学歴社会は新しい文明病であり,その克服なしには人間社会の未来はありえないというのが本書の主張です。日本,イギリス,発展途上国の実態を歴史的に検討し,その比較・分析を通して本来の教育機能のための方策を具体的に提言した名著です。なお,本書は現在絶版ですので,図書館で借りるときは第2版や初版もあわせてお探しください。それぞれの版で表紙はまったく異なります。
 この本に関するご意見は読後にお書き込みいただけると幸いです。

【同書籍】
学歴社会 新しい文明病 …1990年出版の第2版。黄色の表紙

学歴社会新しい文明病 (1978年) (岩波現代選書〈3〉)…初版

Amazon.co.jp: The Diploma Disease: Education, Qualification And Development: Ronald Philip Dore: 洋書…原著

【参考】
高等教育の再編成—専門学校から大学への編入—
「アキューム」9号 「初代学院長の思い出」…「共通一次試験教育の国家統制で学校のランキングを公にするものだ。」,「高校までの成績で入学を差別するシステムにはくみしない。」という名言があります。

【ブログ内】
それでも大学に行きますか?–その2
それでも大学に行きますか?

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