「基礎数学の123」著者語る8 二次方程式の根,複素数

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 今回は二次方程式の根から複素数,複素数平面について考えてみたいと思います。コンピュータでは原則的には複素数は扱えません。複素数をサポートしているのは研究分野以外ではメジャーでないFortranぐらいでしょう。そのことを考えると,高等学校の数学で複素数に深入りする必要性があるのかと思います。

第1章 1次関数,2次関数 第2節 2次の変化と方程式
第2章 数と式 第1節 実数と複素数
第6章 座標幾何 第2節 極座標の幾何

1 ルートの中が負の数になる
 複素数がどうやってでてきたかというと,ルートの中が負数になることから出てきています。コンピュータで計算することを重視する立場では,実数をまず重視するべきでしょう。そこで第1章では実数だけで考えています。そこで解(solution)と根(root)を区別します。
判別式Dが正  実数解は2つ, 異なる2つの実数根
判別式Dが0  実数解は1つ, 同じ値の2つの実数根
判別式Dが正  実数解はなし, 異なる2つの複素数根

 このように整理した方がすっきりします。解は場合によって個数が異なるが,根は常に2つあるんです。
 第1章p18と第2章p50を比較してください。
 
2 計算について閉じている
 第2章の最初に,自然数,整数,有理数が加減乗除で閉じているかどうかを最初に考えさせることにしました。プログラミングの際,整数型で定義した複数の変数の平均値をとると割り算が発生するので,浮動小数単型に変わります。強制型変換つまりキャストする必要があります。こういうことを意識させるが数学で重要です。

3 三平方の定理から無理数へ
 たびたび,三平方の定理を簡単に扱って,無理数の図解を行っています。ピタゴラス学派は三平方の定理から,無理数に気がついたんですから,こういうことは教える方がいいですよね。しかも,印象深いと思います。
 ルートの足し算と引き算(p44)の図解はいいと思いますよ。また二重根号については,p224の正五角形の対角線を参考にするといいでしょう。

4 複素数平面
 複素数の図形的表示ですが,第2章では共役と和・差をとりあげます。
 第6章で極座標として複素数を取り上げて,複素数の積・商をとりあげます。
この本の趣旨は高等学校の数学を単に復習することが目的ではなく,大学や専門学校の数学で使っていくことが目的です。自然対数の底eの虚数べき乗まで扱って,最後はオイラーの公式でこの本と締めとしました。

【参考書】

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「基礎数学のABC」著者語る6 図形と座標

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 今回は「図形と座標」について取り上げます。

第5章 解析幾何とベクトル 第1節 図形と座標

 内分・外分,ベクトルの内積,ベクトルの線形結合を扱っています。高等学校ではばらばらのものを効率よく扱っています。

1 てこの原理から内分・外分
 座標内の内分・外分はてこの原理をつかえばかなり楽に理解できます。しかし,てこの原理は小学校の理科では昔ほどはやりません。中学入試をうけるような特殊な方だけで持ち合わせている知識なんです。
 問題はてこの原理を知らないことです。本書執筆の更に5年前の2000年頃に私は小学生に中学入試の理科を教えました。てこの原理を教えた日のことが忘れられません。「みんな,シーソーに乗ったことあるよね?」というと,「先生,僕の家の近くの公園にシーソーありません」,「先生も僕も」,「シーソーはあったのは見たことがあるんですが,いつの間にかブランコと一緒になくなっていました」という具合に,クラスは騒然。これじゃ授業にならない! まったくかわいそうですね。こんな状況では勉強ができるようになりませんよね。
 でも,てこの原理というのはモデル化の一つです。なんとか,体感してもらいたいものです。ちなみに,執筆当時,てこの原理のアナロジーで内分・外分を紹介することは共著者からも反対があったんですが代替案がなかったんですね。

2 三平方の定理→余弦定理→内積
 この章では,解析幾何での便法として,幾何ベクトルを定義しています。そして,高等学校では,

  • 三平方の定理(中3)
  • 余弦定理(数学I,高1)
  • 内積(数学B,高2)

 という具合にばらばらに学習するので,連携がありません。リメディアル本なので,これを一つの流れにしました。結構,わかりやすいのではないかと思います。

3 線形結合へ
 本節の最後には線形結合まで導いています。ベクトルを図形としての定義をはじめにして,多次元量としての定義を後回しにしています。このあたり,どう導入するかはいつも悩む問題です。ちなみに,「サク単 線形代数」では図形としての定義を優先しました。

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「基礎数学のABC」著者語る5 個数の処理と確率

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 今回は「個数の処理と確率」について取り上げます。

第2章 個数の処理と確率 第1節 個数の処理
第2章 個数の処理と確率 第2節 確率

1 個数の処理
 まずは華々しい例題として,「中世イタリアの3つのサイコロの目の和をあてる」という賭け事をとりあげました。目の和が9になる場合も10になる場合も組み合わせは6通り。しかし目の和が10になる可能性の方が体感的に高いことが知られていたんですが,その根拠がわからなかったんです。そこで,組み合わせと順列の違いを理解してのに好例だと思っています。p46からp47にかけて,実際のサイコロの目が出ています。
 つづいて,幕の内弁当のことも述べています。重複組み合わせではアイスクリームを例にしています。

2 二項定理とパスカルの三角形
 パスカルの三角形は微分・積分を学習するときの基本なんですが,高等学校では伝統的におまけ的な扱いになっています。多項式展開に必ず出てくるのが,パスカルの三角形。
 組み合わせを学習していない場合は二項定理は無理でも,パスカルの三角形なら直感駅に利用させることは可能なので,是非とも,多項式展開ではうまく教えることを望むところです。

3 集合からのつながりで確率を
    第1章からつながりで,確率を扱うように努力しました。
共著者の努力で豊富な例題がそろっています。

4 幾何学的確率
 面積で漠然と表される確率があることを述べました。ここでは滋賀県のなかにしめる琵琶湖の面積をメッシュに区切って求めることを行いました。

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「基礎数学のABC」著者語る3 統計とコンピュータ

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 今回は「統計とコンピュータ」について取り上げます。

第3章 統計とコンピュータ 第1節 資料の整理 第2節 資料の分析 付録2 「表計算ソフト」を使いこなそう

1 表計算ソフトを用いた記述統計  2003年度改訂実施の学習指導要領は「ゆとり」がひどいと批判にさらされていた。それは小学校や中学校の算数・数学と理科の話で,高等学校の数学のカリキュラムとしては円熟していたようにも見えました。特に,コンピュータとの関連です。  当時の数学Bを整理すると以下のようになります。

  1. 数列
  2. ベクトル
  3. 統計とコンピュータ…表計算ソフトを用いた統計処理
  4. 数値計算とコンピュータ…BASICでニュートン法などを扱う

 以上をみればわかるように,プログラミング言語と表計算ソフトの使い方がほどよくなっているのです。教科書の巻末には表計算ソフトの簡単なマニュアルまで付いていました。そこで我々もこの流れにしたがって,推定・検定以外の記述統計を中心に扱いました。

2 統計から確率,確率から統計
 1982年度学習指導要領の「確率・統計」と振り返ると,当時の文部省は以下のような構成を想定していました。

  記述統計(資料の整理)→場合の数→確率→確率変数→推定統計(統計的推測)

このうち,統計的推測は東京大学で出題しないと明言していたので,多くの高等学校では学習しなかったのではないかと思います。さて,例の三省堂の教科書を見ると,市販されているのは初版(1982年)です。ここではこの流れです。しかし私が持っている新版(1988年)では

  確率→場合の数→確率変数→記述統計(資料の整理)→推定統計(統計的推測)

となっています。多くの教科書ではこの流れだったようですね。歴史的経緯で行くと,記述統計が先に出てきます。まったく別の文脈で場合の数がでてきて,確率へつながり,記述統計での概念と一致してくるのです。なお,場合の数は英語ではcounting methodと言われるので,ここでは「個数の処理」という名称をつかっています。

第3節 数学,1982年度学習指導要領…確率・統計
第4節 数学,1994年度学習指導要領…数学I,数学B

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「基礎数学の123」著者語る7 数列,積分,微分方程式

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 今回は数列,積分について考えてみたいと思います。

第3章 数列 第1節 数列
第4章 微分積分入門 第2節 積分, 第3節 微分方程式

1 積分に制約が,,,
 先の記事で微分が3次まで限られている旨を述べました。それでは数学IIの積分はどうなるのでしょうか?
 当然,定数項,一次式,二次式までですよ。だって多項式なんか知らないのですからね。
 
2 積分の導入
 これは大変難しいんですよね。区分求積で数列の和を求めて,極限とっておしまいとしたいんですね。だからそうしています。しかし,高校生たちは数列が既習事項でないので,そういうことはできないんです。かわいそうとしか言いようがありません。「なぜ,数列を学習させるのか」を文部科学省の担当者はわかっていないので,数列の位置づけが指導要領ごとにかわるのだと思います。
 コンピュータで積分の計算をするときは区分求積です! だからp177に以下の対応表をつけました。
 微分←→差分(階差数列)
 積分←→和分(Σ)
 なお,本書ではこだわって,区分求積の分割数が大きいほど正確な積分値が求まることを示しています。意外に画期的だと思っています。

3 微分方程式
 このレベルの書籍で微分方程式まで取り扱う本はあまり見かけません。でも積分の応用として微分方程式までやる必要がありますよね。こうすれば物理学でも工学でも使える形に到達するからです。詳しく知りたい人は続編の「微分積分の展開」を読んでほしいものですね。

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「基礎数学の123」著者語る6 多項式,微分

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 今回は多項式,微分について考えてみたいと思います。特になぜ,多項式が微分と関係があるのかについて詳しく述べたいと思います。

第2章 数と式 第2節 多項式
第4章 微分積分入門 第1節 微分

1 高等学校の数学IIでは3次式の微分まで
 1994年度の学習指導要領の改定実施以来ずっと,高等学校の数学IIでは3次式までの微分に限定されていました。脱ゆとりで2012年度以来の理数前倒しの学習指導要領の改定で「4次関数の微分が解禁」なんて言葉が受験業界で飛び交うようです。
 そもそも,規制緩和といっていた小泉政権のころに実施された第3次ゆとり教育でさえ,この意味不明な規制があったんですよ。その精神は,なんと「高次方程式」の扱いが数学Iから消えたからです。

  •  3次式の微分→導関数は2次関数なので,2次までの因数分解は可能
  •  4次式の微分→導関数は3次関数なので,3次までの因数分解は既習事項ではない!

 昔,基礎解析(第一次ゆとり教育)とか数学IIB(現代化カリキュラム)とか言っていた世代には考えられないですよね。なにそれ?

2 多項式の扱い
 たぶん,「高次方程式はマニアックな因数分解ばかりで,ゆとり教育にはなじまない」という具合に削られたのだと思います。前後見境なく削ると,あとの微分の部分にまで影響すると考えていなかったんでしょうか?
 そんなことで,数学IIまで履修していない大学生対象の本では当然,多項式の扱いで3次式を扱う必要があるんですよ。そうしないと,4次式の微分を扱えないのですね。
 第2章で二項定理を基本に据えました。そのため,n乗の展開に備えるとn乗の微分も当然扱えます。コラムで小さく扱っています。

3 微分・接線の応用としてニュートン法を扱いました。
 本書は,コンピュータで数学を扱うことを意識しているので,当然,ニュートン法を扱いました。当時の高等学校の教科書でも扱われているので当然,扱うべきなんですが,高等学校ではBASICで扱っています。そこで,本書では表計算ソフトで扱いました。
 
4 微分演算子とその線形性も
 p153からp156まで微分演算子とその線形性も取り上げました。これを扱うことによって,limの線形性も扱えます。とても合理的です。

【リンク】
ゆとり教育で不足した学力はどこで補完するのか ~社会人になるために~ | Vol.20 | アキューム

 【ブログ内参考】
ゆとり教育の歴史 その3
ゆとり教育の歴史 その2
ゆとり教育の歴史 その1

 

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「基礎数学のABC」著者語る4 図形と式,領域と不等式

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 今回は「図形と式」について取り上げます。数学の苦手な人が混乱している要因そのものではないかと考えて執筆した部分です。

第5章 解析幾何とベクトル 第2節 図形と式
第5章 解析幾何とベクトル 第3節 領域と不等式

1 いわゆる媒介変数をするための動機
 いつも参考にしている三省堂の教科書「数学I」では,「図形と方程式」という単元を「図形と運動」として取り上げているのです。2次元平面座標の直線上を運動することによって,ある場所からある方向へ歩き始めることによって,直線が決まることを理解させるというのです。現在であれば,GPSの情報で直線に歩くなんて日常的ですね。

2 2次元平面上の直線の式
 直線を表すのに以下のように5つに分類しました(p207)。
式(2.1) 陽関数型(いわゆる一次関数)
式(2.2) 陰関数型(x,yの一次方程式)
式(2.3) 切片型…式(2.2)の変形
式(2.4) 媒介変数型→これが発展するとベクトル方程式
式(2.5) 方向比…式(2.4)の変形
 ブラックボックスの図解をp218で行いました。

3 円の方程式,放物線の方程式
 この節の終わりで,円の方程式,放物線の方程式を扱います。
・陽関数型
・陰関数型
・パラメータ表示
 p226では表にまとめています。この表は「単位がとれる微分・積分」では公式集として拡大した形が掲載されています。
 p225には座標で絵を描くという例題を解いてもらっています。いわゆるコンピュータグラフィックスの初歩ですね。現代であれば,HTML5のCANVASかSVGで書くような指導ができればと思います。

4 領域と不等式ではゲームアプリの衝突判定
 高等学校の数学では「領域と不等式」といえば,「線形計画法」を教えるの定番です。情報処理技術者試験の定番ですのでいいのです。それ以上に大学生や大卒生が興味をもつのが,ゲームアプリにおける衝突判定です。ゲームアプリのようなCGの世界では,物体が接するめり込んでいくのが当たり前です。どうやればめり込まないか? お互いの領域を不等式で判定するんですね。「領域と不等式」は身近な例は実はゲームアプリなんですよ。

5 高校で楽しい授業を期待する「図形と方程式」
 はっきり言って,高等学校の授業で最も難しい単元ともいえます。1994年度の学習指導要領以来ずっと数学IIに入っています。関数は,入力xから入力yへの写像と考えるとわかりやすいのですが,この単元は中途半端に関数が出てきて,方程式が意味不明にでてきます。
 しかし,理解を助けてくれるのは図形です。現代であれば,コンピュータで簡単に図を描けます。今年はHTML5のCANVASかSVGで書くような教材を開発してみたいと思います。

【参考】
第4節 数学,1994年度学習指導要領…数学II

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「基礎数学の123」著者語る5 対数

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 今回は対数について考えてみたいと思います。

第5章 指数・対数関数,三角関数 第1節 指数関数と対数関数

1 10の小数べき乗
 そもそも10の0.3乗はおよそ2になるんですが,どうやって計算したのかという疑問はありました。現在のコンピュータではべき級数展開で計算するのですが,手計算で概数を求めることができないのかなと思っていました。それが三省堂の教科書「基礎解析」の指導書の部分にありました。森毅先生の記事で計算円盤尺というものです。これを例題化したのが,p198の問題です。
 2^10 ≒ 10^3
∴ 2=2^1 ≒ 10^0.3
 という展開です見事。また
 5 = 10/2 = 10×2^(-1)=10^0.7
というぐらいに展開できます。
 同様にすれば,4, 8は求まります。3^4 =81は80に近いことから3ももとまります。
7^2 =49は50に近いことから7も求まります。すごいですね。
 こういう手計算をすれば,「10の小数べき乗」も架空のことではないことが実感できます。

2 対数って
 上の議論を拡張すれば,どんな整数でも10のべき乗で表すことができます。
そうすれば,複雑な数どうしのかけ算を対数の足し算ですますことができます。実はこれが対数の醍醐味なんです。つまり,
  真数のかけ算←→対数の足し算
 これをジョン・ネピアという人が発見したんですね。高等学校で数学IIIのときに対数微分というのがありましたね。あれは,関数のかけ算を微分するのが難しいので関数の対数をとって足し算にしてしまうという技ですね。

3 対数の底(base)
 いま,人間界では十進数が使われているので,10のべき乗を議論してきました。しかし,もっと便利な底がないのかと人々は探してきました。それが自然対数の底eなんですね。本書では高校の復習といいながら,eまで扱っています。eを導入するにはパスカルの三角形が必要なんですが,その話は後日にしましょう。
 ちなみに,コンピュータの世界では底を2にしています。もちろん2進数ですからそうするのですが,かけ算が足し算で処理できるので,コンピュータはかなり楽をしているのは大昔の人間と同じです。

【参考】
「対数微分」は以下をご覧ください。

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「基礎数学の123」著者語る4 2次関数と平行移動,2次方程式と因数分解

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 今回も著書を横断的に,2次関数と平行移動,2次方程式と因数分解というテーマで扱ってみたいと思います。

第1章 1次関数,2次関数 第2節 2次の変化と方程式 
第2章 数と式 第2節 多項式
第6章 座標幾何 第1節 直交座標

1 数学トラウマは高等学校でどう作られるか?
 共著者の先生が女子大で数学をおしえておられたのです。執筆当時にその先生にご意見を伺うと,「学生たちは因数分解がわからないのに,大学で数学を学ぶことはできるのですか?」という質問をし続けるそうです。高等学校の数学の最初で学習する「数と式」で難しい因数分解を体験して,その後の数学のつまづきを解消できず,トラウマだけがのこったのでしょう。そしてその先生が「この本では因数分解を知らなくても2次関数や2次方程式がわかるように構成したい」という強い願いから,本書では第1章では2次関数や2次方程式を解説して,あとから因数分解を解説するという手法をとりました。
 まず高等学校の混乱ぶりを分析しました。とどのつまりは以下の通りです。
y=f(x)…関数
f(x)=0になるxの値を求める←→x軸との交わりを求める…方程式を解く

 ここがはっきりと語られないので,学生たちの混乱が走るのですね。そして,方程式を解くときに,コンピューターで解くときは,xを数値的に変化させて0になるまで代入しまくって解を見つけるのですね。コンピューターは因数分解なんかしません。だから,この展開はむしろ実用的であると考えました。

2 放物線と2次関数
 できるだけ,微分・積分につながるように,放物線を扱うようにしました。ここで注意するべきは放物線には厳密には2種類あるということです。

  • 横軸が時間tで縦軸が距離y
  • 横軸が時間xで縦軸が距離y

 後者の方は厳密に言うと媒介変数の時間tが介在してxとyが2次関数になりますので,第1章で扱うべきではないと考えました。では,どうするのか?
 三省堂の「数学I」の教科書では,「図形の方程式」の単元を座標幾何として扱っていたのです。これが大いに参考になりました。ちなみに,座標幾何とは解析幾何の別名です。

3 座標幾何
 高等学校の数学には伝統的に初学者にはわかりにくい単元があります。

  • 関数あるいは2次関数
  • 図形と方程式

これを少し模式的に整理しましょう。

  • 関数あるいは2次関数…xが入力でyが出力になる関数。
  • 図形と方程式…xとyは対等で方程式で結ばれる

 という違いがあります。これですっきりとしました。この概念に至るまでに何人ものと方と議論しました。高校数学が理解不能になる理由の一つでもあります。この根源は中学校にあります。中2で履修する一次関数において「関数と方程式」とあるんです。連立方程式を一次関数を同一視する考え方を植え付けいています。これは,立場がちがう見方をしているものなので,同一視するのは高等学校での学習には弊害になっているようにも思います。
 座標幾何に話をもどしましょう。当時,「基礎数学の123」と「基礎数学のABC」は同時進行で製作していました。「基礎数学のABC」の方には初等幾何を掲載することになっていましたので,その続きで解析幾何をベクトルとの関連で扱うことにしました。そこで,解析幾何のうち,座標変換の部分だけを扱うので,「座標幾何」と名称で本書では扱うことにしました。そうすると,直交座標と極座標(複素数平面)という形で整理できることがわかったんですね。

4 2次関数の頂点を見つけて平行移動?
 高等学校の数学の2次関数の指導といえば,ひたすら,頂点をみつけるために平方完成して平行移動ばかり。あの平行移動の説明がわかりにくいんですよね。でも,物理学の立場でいえば,単なる座標変換に過ぎないのです。そこで,第1章では平行移動は扱わず,第6章で扱ったんです。
 それが,p251の「オートバイのダイビング」です。これって,映画「マトリックス リローデッド」の冒頭シーンですよ。トリニティがバイクで突っ込んでいくあれをイメージしてつくった例題です。p256以後の「座標と運動」で媒介変数の扱いを自然に導入していきます,

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「基礎数学の123」著者語る3 黄金比,フィボナッチ数列,正五角形の対角線

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 今回は著書を横断的に,黄金比,フィボナッチ数列,正五角形の対角線を扱います。キーになる方程式はx^2-x-1=0です。とりあげる場所は以下の部分です。

第1章 1次関数,2次関数 第2節 2次の変化と方程式 p15
第3章 数列 第1節 数列 p88, p120
第5章 指数・対数関数,三角関数 第2節 三角関数 p224

1 単純に正五角形の対角線の長さ
 三角比を拡張していくと,2倍角の公式や半角の公式をつかえばいろいろな角度の三角比を求めることができます。詳しくは本文を読んでほしいのですが,p224で36度のサインやコサインを正五角形の対角線の長さから導くことにしました。すると以下の方程式がでてきます。
 x^2-x-1=0
 この正の解の半分がコサイン36度なんです。ここからサインを求めると二重根号が出てきていい勉強になります。

2 黄金比
 そもそも,古代ギリシャ時代のパルテノン神殿の頃から黄金比は発見されています。ヨーロッパ文明で大昔から「わーきゃー」と騒がれてきたのに,日本では一部の数学マニアだけが知っている事柄です。早速Wikipediaの項目の参考文献を見てください。どれほど,このテーマの本が多いかがわかりますよね。

黄金比 – Wikipedia
 この黄金比を学生さんに教えることはきわめて重要なことだと思います。そもそも黄金比は正五角形と関連づけて語られることも多いわけです。

3 フィボナッチ数列
 お恥ずかしながら,私はフィボナッチ数列の存在を大学生になるまで知らなかったのです。その存在を知ったのは,家庭教師先で三省堂の教科書「高等学校の基礎解析」を初めて読んだときです。なにかショックみたいなものが走りました。
フィボナッチは次の問題を考えました。
1つがいの兎は、産まれて2か月後から毎月1つがいずつの兎を産む。
兎が死ぬことはない。
この条件のもとで、産まれたばかりの1つがいの兎は1年の間に何つがいの兎になるか?
 この数列をp120で解説しています。特性方程式は
x^2-x-1=0
となり,やはり,黄金分割と関係がでてきます。
 ちなみにWikipediaも読んでみましょう。
フィボナッチ数 – Wikipedia

 ひまわり,パイナップル,植物の葉の付き方,貝などの自然界にはよくあることがわかります。
 以下のような記事もご覧になるといいと思います。
【参考】

第14回:全ての植物をフィボナッチの呪いから救い出す

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